3歳と1歳の二人育児をしていると、夜になるたびに同じ迷いが頭をよぎります。弟が泣いたとき、パパを起こすか、それとも自分が対応するか。パパはすぐ隣で寝ていて、頼めばきっとやってくれる。それは分かっているのに、私は何度も迷って、結局起こさない夜を選んでしまいます。
「頼めばやってくれる」パパだという前提
最初に言っておくと、パパは冷たい人ではありません。むしろ、基本的にはとてもやさしい人です。不完全なところはたくさんあって、「わたしの話を聞いてない」「ないがしろにされてる」と感じて、これまで何度も怒ってきました。それでも、「優しくない」と思ったことは一度もありません。子どもたちのことも大切にしているし、お願いすればきっと動いてくれる。だからこそ、「頼れない」という感覚が、余計に説明しづらくなります。
それでも夜中に起こせない理由
それでも夜中に起こせない理由のひとつが、パパの体調管理です。正直に言うと、あまり得意ではありません。無理をして、我慢して、自分の不調を軽く見積もる。そして、なぜかその状態を言葉でごまかします。
「これは熱が出るときの体の感じじゃない」
「これは悪化するときのだるさじゃない」
そう言い切っておきながら、しっかり発熱する。この流れを、私はもう何度も見てきました。穏やかな顔をした頑固野郎で、「曲げないなら最初から聞くなよ」と思う場面も正直あります。プライドが高いのか、ただの頑固なのかは分かりません。でも、本当にしんどいのは、体調管理ができないことそのものではありません。
嘘をつかれるときに感じる、怒りの奥の感情
本当にしんどいのは、嘘をつかれることです。ただ、その「嘘」に対して感じているのは、怒りだけではありません。もっと正直に言うと、怖さのほうが近いです。
子どもが二人いる今、親が一人倒れるというのは、ただの体調不良ではありません。生活が一気に変わる、という意味になります。しかも、その負担を引き受けるのは、ほぼ確実に私です。
百歩譲って、体調管理ができないことはいったん置いておくとしても、発熱すること自体は仕方がないのかもしれない。でも、その先のイメージを共有しておいてくれたら、私はもっと楽になれると思っています。あらかじめ買い物に行っておく、生協の宅配を頼んでおく、この先数日の食事メニューを考えておく。できることはいくらでもあるのに、「大丈夫」と言われてしまうと、私は何も準備できないまま、その時を迎えることになります。
嘘をつかれるのが怖いのは、信頼していないからではありません。一番怖いのは、「備える」という選択肢を奪われることです。
夜に判断を背負うということ
夜の判断は、やり直しがききません。起こすか、起こさないか。今動くか、少し待つか。その一つ一つが、翌日の生活にそのまま影響します。誰かに相談できるわけでもなく、正解が用意されているわけでもない。もし間違えたとしても、「あのときこうすればよかった」と思うのは自分だけです。評価も感謝もされないまま、判断だけが静かに積み重なっていく。その重さを、夜になると一人で抱えています。
私が欲しいのは、説明じゃなくて準備
正直、言い分にはあまり興味がありません。欲しいのは正当化でも反論でもなく、ただの判断材料です。「風邪かも」。その一言があれば、「あちゃー、残念」で済む話なのに、と思ってしまいます。
だから私は、パパの言葉よりも、自分の察しを信じるようになりました。10年一緒にいる妻として、これまでの経験のほうが当たってきたからです。
ただ、そのズレは、日中や夕方の余裕がない時間帯に表に出てしまいます。「話を聞いてない」「ないがしろにされてる」と、強い言葉で怒ってしまうこともある。でも本当は、責めたいわけじゃない。ただ、怖いだけなのだと思います。
怒りがボルテージに達してしまっていたり、これまでの積み重ねがあって、必要以上にきつい言い方になってしまうこともあります。状況によっては、「これは全面的にパパが悪いだろ」と思う場面だって、確かにあります。
けれど、鬼?悪魔?のように怒っていた私も所詮は人の子。
夜になると、「人の心」を取り戻します。
こどもの寝顔を見ながら、その日一日を反省する、という話をよく聞きますが、パパであってもそれは同じです。子どもに向けるような無償の愛とは、正直言いがたい。どうしても見返りを求めてしまうし、分かってほしい、察してほしい、という気持ちも出てきます。それでも、大切な人であることに変わりはありません。
そして夜になって、ようやく一人で考える時間ができると、さっきのやりとりを思い返してしまう。寝息を立てている姿を見て、「言いすぎたかな」と反省するのは、だいたいいつもこの時間です。それが正しいのかどうかは分からないけれど、何も考えずに怒っているわけではない。そういう自分に、あとから気づくことがあります。意外と、ずっと。
正解が分からないまま、また夜が来る
パパを起こさないことが正解なのかは、正直わかりません。頼ってほしいって気持ちも、もしかしたら少しはあるのかもしれない。こどもとは違うんだから、ちゃんと話してみたらいいのかな、とも思います。
まあ、話したところで、また嘘なのか正当化なのか分からない言葉が返ってきて、本音は言わないんだろうけど。
……たぶん、そういう人だから。
今日もまた、答えの出ないまま夜が終わります。それでも明日は来て、また家族で一日を回していく。そんな夜を、これからも何度も繰り返していくんだと思っています。
